「初めて大野の街を歩いたとき、歴史的な街の資産がとても多い地域だと感じました。大野は北前船の寄港地として栄えた醤油の産地です。昔はもろみをそれぞれの店で作っていましたが、今は組合が一括して製造しているため、街の中にかつてはもろみを作っていた蔵が何十棟も遊んでいます。通りには醤油の香ばしい香りがほのかに漂い、車もほとんど通らない。ここだけ時間がゆっくりと流れているような、不思議な感覚を覚えました」
「私が大野のまちづくりに関わることになったのは、大野町商工振興会の勉強会で、講師を務めたことがきっかけです。振興会の方と一緒に視察旅行に行き、ゆっくり話をしてみると、自分たちの街の魅力をよく知っていたし、まちづくりのために労力もお金も惜しまない勢いがありました。『これならいける!』と感じましたね」
「最初の取り組みである「もろみ蔵」の改装工事は、わずか8カ月間で完成。住民が自分たちの手でレンガを敷いたまさに手作りのまちづくりです。街の中で長い間眠っていた蔵が、住民たちの手で、魅力的な空間に蘇ったのです」
「当初は地元住民が集うサロンのような空間を想定していましたが、街の新たな名産品『しょうゆソフトクリーム』が人気を集めたこともあり、県内外で予想以上の反響を呼びました。マスコミにもたびたび取り上げられ、いまでは観光客も立ち寄る金沢の隠れた名所として定着しています」
「私はまちづくりが、自分の街をしっかりと見つめ、魅力を再確認することから始まるものだと思っています。その土地だからこそ、できることがある。大野はそこがしっかりしていたから、成功したのではないでしょうか」