【3代目 津田千枝】
「この水引細工の絵は、20代の若さで亡くなった母の弟、太一あんちゃんが、父親(編注:左右吉さん)の水引細工をスケッチしたもの。この絵が、私の運命を決めたんです。若いころ家を継ごうかお嫁に行こうか迷ったけど、この絵を見つけて改めて、うちの水引は素晴らしいと思ったんです。祖父と母が水引で頑張ってきたのに、一人娘の私が嫁に行ったら何にも残らんくなる。やっぱり継がなきゃって。でも私は手先がそんなに器用じゃないんです。主人と一緒だからこそ、二人三脚でここまで続けられたんです」
「私たちがずっと目指しているのは、暮らしになじみ、楽しむ水引。いくら素晴らしい伝統でも、いまの人たちに「関係ないわ」って思われたら、何にもならんから。若い人の感覚にも馴染む作品を作って、いいものだって誇りに思われる水引にしたいですね」
「主人の助けを借りないで、私一人で考えた唯一の作品が、このしめ飾り。銀座の真ん中で、わらで作ったしめ飾りが行列つくほど売れていたの。それを見て、水引ならもっと素敵なものが作れるって思ったんです。帰りの飛行機でスケッチしたものをすぐに作ったら、飛ぶように売れました。15年も前のデザインだけど、現代的でいいでしょう。今もずっと人気がある、自慢の作品なんですよ」
「あのね、贈り物をするとき、心ってすごく大事なんやわ。物を買うことは誰でもできるけど、それだけで感謝やお祝いの気持ちを表すのは難しいの。人に何かあげるとき、水引を一筋かけて、筆でお祝いとか御礼とか書いて持っていくと、その品物が生きるでしょう。そうやって心を形にする日本ならではの習慣を、大切にしたいと思うんですよ」