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才田 春光さん

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形を残さない文化の提案

アートのスタイル
形を残さない文化の提案
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才田さん  顔スナップ
【プロフィール】
ピールアーティスト 才田 春光さん
ママゴトの延長線上から生まれた創造芸術を開拓し、 主に果実皮(ピール)を素材とするところから名づけた「ピールアート」のパイオニア。
http://www.peelart.com/

才田さんが創る「ピールアート」とは果物等の“皮”を使って器など様々なモノを創作することだが、そこから本当に伝えたいことがあると言います。


ママゴトみたいなもの

-ピールアートのキッカケとは?

「初めは誰かに見せるために作っていたのではなかったの。単に自分の楽しみとして、例えば皮を反転させたら、器みたいになったからそこへ何かいれようとか」

「そう、ママゴトみたいなものね。自分が楽しいから皮と遊んでただけなの、でもそれを見た人が『これ面白いね』って、驚いてくれたり、喜んでくれたりしたの。人ってほら誰かに評価されると嬉しいですよね。その言葉で、あっこういうことで喜んでもらえるんだなっと思うと、また作ろうって」(笑)

「子供も大人も一緒だと思うのね。リアクションがあるって快感ですよね。ほめ言葉もうれしいし、だから言ってみれば、ピールアートは周りの人が引き出してくれたって言うか、育ててくれたの。そういう言葉がなかったらピールアートは生まれなかったかもしれない」
写真:ピールアート
ピールアートの作品をもっと見たい方はこちらへ


お客様が育ててくれた

「具体的にピールアートが世の中に出るようになったのはお店(※才田さんは金沢の繁華街で「夕顔」を経営している。2004年7月で閉店予定。今後はピールアートの活動に専念)を持ってからね。それまでは、ほんとママゴトと一緒で、こんな形にはなってなかったの」

「お店を開くことによって、ちょっとおつまみとかを入れるのに、ガラスの器、焼き物の器といろんなものがあるけど<特に金沢では伝統工芸品が豊富>。それだと何にかもの足りない(自分らしくない)と思っていたの。そんな時、このお店は「私のへや」なんだとあらためて気付き、それなら、自分が一番快適な空間にすればいいんだと・・・。大好きな自然を取り込もう!。と、子供の頃のママゴトさながら、葉っぱの器にしたり、柑橘の皮の器にしたりと遊んでいたら、お客様がとても面白がってくれる。ふと気がついたら、それがだんだん成長していってたって感じ。ピールアートは夕顔のお客様が育ててくれたんだと思います」

「お店自体は、子供の頃に私が田舎で遊んだ自然環境を再現したような感じで始まりました。天井にはタンポポのシャンデリア、壁には蓮の葉っぱのランプシェード、オタマジャクシやメダカもスタッフの一員(?)だったから、『ここは何屋さん』ってよく言われたわ。カタツムリがボトルの上を這ってた時もあるのよ」
BAR「夕顔」 内観
「夕顔」の店内。天井から下がるタンポポをはじめ、たくさんの作品たちが迎えてくれます。


罪悪感・・そして疑問

「いろんなものに命があるという事を、物心ついた時には当たり前のことと思ってたのね。それは、私の祖母がいつも生活の中で、『いろんなものには命がある』ということを口癖にしてたからだと思うの。白紙に落とされた最初の色が染み込んで消えないように・・、私の中に刷り込まれたのかもしれない」

「だから、ものを捨てる時にどこかで罪悪感を覚えるの。例えば果物でいうなら中身を食べて皮を捨てる。食べる前は皮と中身が一緒、一つのものですよね。「ひとつの命」。・・・皮と中身の扱われ方に何か釈然としない疑問を持ってたわけ、『自分と同じ命なのにいいとこ取りして』って」

「スーパーなんかでいろんな果物が売られてますよね。みんな買う時は皮を見て買うでしょ。同じ値段なら、大きなもの、きれいなもの、それからもちろんおいしそうなものってあるけど、それは何で判断するかって言うと殆ど皮を見てですよね。中が見えないから」
ピールアート制作の様子
ちょっとした時間にもピール(皮)との会話を楽しむ。「時間が幾らあっても足りない」と才田さんは笑います

天国と地獄への選別

「皮を見て選ぶのに、それを家に持ち帰って食べる時は、中身への関心に移って、いつの間にか皮はいらないもの、賞味する部分と生ごみにする部分、まるで天国と地獄への選別ね」

「いらなければゴミ箱行きですよね。そんなことに違和感をもつ自分がいるの。優先順位第一に選んだ皮なのに、食べる段階ではすっかり忘れさられて捨てられてしまうっていうのはなんか変だなと」

「そんなこと当たり前じゃないって言われたら、多くの人がそうしてるから当たり前なのかもしれないけれど、私の中ではそうではないわけね。なぜなら、皮が守ってくれたからこそ美味しい果肉に育って私たちが戴けるわけじゃない。(皮って、まるで子供を抱いて育てるお母さんみたい)だったらその皮も何か生かせないかしら、って思いが私の中でず〜っとトゲみたいに、刺さっていたの」
写真:ピールアート2


祖母の原風景

「じゃあそれをどうするのって言われてもどうにも出来ないわけですよ、当時は。幼い頃は田舎にいて、いらないものは畑とか田んぼに戻す、土(自然物の故郷)に返すということが速やかに出来るので、違和感をもってはいたけど、私の中ではさほど大きな問題ではなかった」

「ところが街に住むようになると、土へのUターンが容易ではない。そこで、巣くっていた思いがフツフツと湧き上がってきたというか。そんな中で私の方も成長していって、子供の頃の初歩的なものから、器やオブジェ、灯りなどと造形的にも変化して、ようやくこのピールアートという一つの世界が見えてきたんですね」

「だからピールアートの原点って、「いろんなものに命がある」という言葉と、「勿体無い」と言ってものを大切に使ってた祖母の後姿。そういうことが原風景のような気がします。」
才田さん 写真


タンポポパワー

「取るに足らない、ほんとに弱く儚いもの達って、案外凄い力を持ってると思の。例えばこのタンポポ、みんな不思議がるんだけど、これ一年以上経ってるのね。何で落ちないのって言われるけど・・、特別なにかをしているわけでもないし、自然乾燥のままよっていうと、みんなびっくりするの」

「タンポポってこわれやすいってこと誰でも知ってるじゃない。フッと吹いたら飛んで行くもの、少しの力で簡単に壊れるものだって知っていたら、人はどう扱うかしら・・・」

「例えば、手の使い方だけど、重い石を持とうと思った時の力の入れ方と、赤ちゃんをだっこしようする場合では、同じ手でも使い方は違うでしょ、赤ちゃんをいだく手には優しさが満ちているんじゃないかしら、指先までも」

「それと同じように、このタンポポの綿毛って、フッとしただけで飛んでくって知ってるから、みんなが優しい気持ちで扱うのね。タンポポが一年以上も飛んでいかない訳は、外的な意味では吹かないし、強い力を加えないからなんだけど、それだけじゃない」

「人の心の中にある優しい気持ちが引き出されて、壊れそうなものは壊さないような扱い方をしているからなんじゃないかしら。そういう意味では一見弱そうなものには独自の凄いパワーがが秘められているじゃないかと思うの」

「儚いもの、弱いものは、『私はそういうものなのよ』って相手に伝えているのね、彼ら流の言葉を発してるんだと思う」
写真:ピールアート3
タンポポのシャンデリア


目覚ましの役目

「人間は言葉を音として声に出して伝えることができるけど。他のもの達はしゃべれないかというとトンでもない、私はものすごく多弁だと思う。耳に聞こえる言葉じゃなくて、もっとダイレクトにハートに訴えかける言葉を持ってるんじゃないかしら」

「そして、誰でもその言葉を聴くことができると思うのね。でも日常は、いろんな事で忙しすぎて、その余裕がないって言うか、チャンスがないだけだと思う。そんな時にピールアートが役に立つのではないかしら」

「今までは何も考えずに皮を捨ててたかもしれないけど。皮がいろんな形になることで、『エーッ、これがミカンの皮!?」って思った瞬間、心の中にある「あかずの間」のドアをコンコンってノックされたような感じ。そのドアを開けるかどうかはともかく、ピールアートがちょっとだけ「目覚まし」の役目をしてくれるじゃないかしら」
写真:店内


聴くことは感じること

「私は「聴く」ということをとても大切にしてるの。耳偏に十四の心と書く、聴覚の聴ね。「聴く」っていうことは十四の心をもって素直に感じようという意味だと思うの」

「常に自分の心と体、全身で、果物の声を聴こうとしているの。だからほんとは私がピールアートを作ってるんじゃなくて、彼らがなりたいという、その声を聴いてるっていうか、感じ取ってる。私を使って、彼らは自分がなりたいものになっているんじゃないかしら」
写真:ピールアート4
空瓶を包み込むネットのようになったオレンジやグレープフルーツの皮。才田さんは彼らがなりたいものに姿を変えてあげるのだと言います


ピールアートは「青い鳥」に似ている

「ピールアートは誰でもよく知っているものを素材にしてるんだけど、いつも身近にあるものって見慣れすぎてて、逆に見えないんじゃないかと思うのね。だからもう一度それを見つける・「再発見」するきっかけになるんじゃないかしら。素晴らしい世界がすぐそばにあるってことに気づくことは、『幸せ』に気付くこと。ピールアートは『青い鳥』に似ているかもしれない」

「私はこの世のすべてのものに流れてる共通のものって、『命』じゃないかと思っているの。だからその命を、すぐ身近にあって、普通は価値がないと思っているものの中に見つけ出せたらと。まあ、宝探しみたいなものだけど、少しでもそのことに気付いて欲しいなって・・」

「ほんと楽しいですよ。楽しいのは何かって言うと常に新しい発見をするから、飽きないのね。毎回同じことをしてても、昨日は分からなかったことに今日気づいたり。とても奥が深いというか、たぶん無限なんでしょうね。常々、『自然は大きなおもちゃ箱』だと思ってるの。とても遊びつくせない。何回生まれ変わってもそう思うんでしょうね。だから、めいっぱい遊んで欲しい。なにしろ私たちはおもちゃ箱のど真ん中に生まれて来たのだから」
才田さん 写真2


命の循環の中での遊び

「ピールアートは命の循環の中での遊び。果肉は美味しく食べて体の栄養に、果皮は楽しく遊んで心の栄養にそしてともに土に還ったら次の命の栄養(肥料)に。かたちは変わっても命は変わらないんじゃないかしら。水が水蒸気、雪、氷と変化するだけで無くならないように」

「命の循環の途中で、私は器やオブジェにしたり、ランプシェードとして遊ばせてもらっているんだけど、それを長くもつように人工的な何か処置をするとか、着色するとかになると、う〜ん、ちょっと違うなって」
写真:ピールアート5


形を残さない文化

「形を残そうとすると、新たな問題が生まれてわけですよ。まず形を留めるということは自然に還りにくくするってことね。陶器やガラスの場合、割れてから土に還るまでに時間がかかるでしょう。ピールアートの場合、素材自体が自然の贈り物だから、遊んだ後、生のままでも土に還せるし・・」

「乾燥させて器やオブジェとして数年経った皮は、いっそう土に還りやすい。時々、『どれぐらいもつの?』って聞かれるけど、いつも少し戸惑うの。ちょっと欲張りなんじゃないって、今まで簡単に捨てていたのに・・、人間って本当に形(見た目)に惑わされやすい生き物って実感!。(私もだけど)」

「形をね、残さない文化もいいんじゃないかしら。旅行した時、写真撮ったり、お土産を買ったりするけど、一番の収穫はそのときに感じたことだと思うの。旅先で出会ったの人と話してこうだったとか、あそこの夕焼けが綺麗だったとか」

「いろいろな体験が最高の収穫だと思うのよ。それをもう一度思い起こし楽しむために写真撮ったりして、不確かな人間の記憶にダメ押ししてるんじゃないかしら。」

「自分でやってみて初めて、『あれっ、グレープフルーツの皮ってのびるんだ』とか。いろんな事感じれるわけね。それは外からは見えないことなんだけど、とても大切なことのように思えるの」
才田さん 写真3


未知との遭遇

「自分自身が体験して楽しかった、面白かったって感じた人が、親になって子供を育てる時に、自分が体験した事を、子供にも伝えようとするのじゃないかしら。」

「形に残るものも大事だけど、それ以上に実際の体験がより大切。バナナの皮って焼くとべっ甲色に変わるんだとか、リンゴの皮の赤色ってほんとは皮のほうにはないんだとか、トライした人しか分からない世界の探求はとてもスリリング」

「いつも教えてもらってるの、皮達に。そしてそのこと事態が楽しいの。ほら、思いもしないことを教えてもらって、ナルホドってあるでしょ。それと同じ事やってるわけ。まぁ、あなたってこんな面があったのって感じね。常に未知との遭遇!」
写真:ピールアート6
お菓子の空き箱に並んだピール(皮)達。オレンジの皮や、イチゴのヘタ。何気なく捨てているものが、ちょっと視点を変えることで楽しい気持ちにさせてくれます

才田さんの石川つながり―石川県能登半島生まれ―ピールアートの名付け親であり育ての親

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