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大樋 長左衛門さん

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おもてなしの文化

お茶のスタイル
お茶ほど楽しいものは無いかもしれない
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大樋さん 顔スナップ
【プロフィール】
茶人、陶芸家 十代目大樋長左衛門さん
大樋焼きの伝統を守りながらも、陶芸作家、芸術家としてグローバルに活躍する茶道文化のパイオニア
http://www.ohimuseum.com


要はおもてなしをするということなんです

-大樋さんにとって茶道とは何でしょうか?
「形式的には儀礼を伴うものですよね。ただ、要は個人的に、又はパーティにお呼びするということ、おもてなしをするということなんです。それでは何がおもてなしかというと、おいしいお菓子を食べて、お茶を飲み、美術品を鑑賞してもらう」

「感謝の意を込めて『どうぞお越しください』『楽しいときを過ごしましょう』ということで、寄り合い、パーティがあるわけです」

「人間というのは楽しみが無いと駄目なんです。人間は文化が一番大事なんです。朝起きて顔を洗う、歯を磨き、髭を剃る。これも文化なんです」

「何にもしないのが動物や。身だしなみもそう。食の文化、茶の文化。同じ食べるにしても西洋ならば前菜があって、スープが出て、肉が出る、これは文化です。そういったものがなくなると文化が無くなる。そういった風に順序だてて、自然に文化が出来てきた」
イメージ:お抹茶
「金沢の料理屋だとちょっとした所なら、お抹茶を出す所も少なくないでしょう。手作りの和菓子を出す所もあるし。ちょっとしたことなんだけれども大事なことですよね。文化というのはあの手この手と色々な事で進めていくことですから」

イメージ:工房兼茶室の庵
工房兼茶室の庵。随所に大樋さんのアイデアが見られる


こんなもったいぶった文化は他には無いです

「お茶というのは過去の歴史を回顧し、今と重ね合わせて、楽しく遊ぶということや。それが一人で遊んでもいいけれど、せっかくなら好きな人同士で遊んだほうが楽しい」

「結果として『今日はホントに楽しいひと時を過ごして頂いた。ありがとう』といって、感謝に始まり、感謝に終わる。お茶ほど楽しいものは無いかもしれない」

「衣食住、そして四季の移ろい。そういったものが点在している。接待するということは、誠心誠意、敬意を持って、万難を排して起こし頂く。庭に水を打ち、植木を整えお待ちする」

「お茶の文化というのは世界をみても日本独自の固有のもの。色んな飲み物はあるけれどもこんなもったいぶった文化は他には無いです」
イメージ:茶室
茶室の床の間を見ても、伝統的な形式を継承しつつも、決して古いとは感じない。
「床の間というのは外の世界を屋内に引き入れたものなんです。非常に崇高な場所であり、シンボルである。家の大黒柱のような存在。中心は床の間にある」


大きく言えば命のかかった所作ごとや

「茶室の小間というのは狭いので沢山の人が入れない。1対1で話をしたり、虚心坦懐に政治を語り、文化を語り。時には密会の場であるかもしれない。政治家がよく料亭でやるでしょう。あれと一緒や」

「各大名なり、庶民なりがお茶なるものを身に付けたわけや。広間でやるときは広い座敷で沢山呼べる。小間は沢山は入れない。だから一期一会という場になるわけですね」

「だから茶室とは凝縮された遊びの場であり、文化のつなぎの場所ですよね。文化、政治、経済というのを。そして民族というものを意識して、まずは話をすることでしょうね」

「それが大きな話をする場所としては例えばホテルの会議室であったりする。限られた昔からある形式としては家屋の茶室というものがあるわけです。お茶に呼んでコミュニケーションをする」

「誰がつくった茶碗なのか、お菓子はどこでつくったものなのか、などと話を文化的に展開するわけですね。それが非常に楽しみなものとなる」

「茶道というのは総合芸術やから。茶室、小間、広間に、掛け軸や花を含め、お茶を点てる(たてる)人。飲む人。お茶会は大きく言えば命のかかった所作ごとや」
イメージ:作品を制作する大樋さん
茶陶を行うということ、茶道をするということ、それらは一体の所作として大樋さんのライフスタイルに在る


我々は問われている

-今の時代を生きると言うことは?
「輸入品のグッチやルイ・ヴィトンにしても昔は同じ商品で5年も6年も引っ張っていた。それが今はどんどん新しいモノを出す。消費につなげるわけです。変えるから売れる。売れるから変える。経済の原理原則です」

「そこが昔と今では違う。ですからお茶にしても今の茶道具が必要なんでしょう。それと同時に古いものを大事にしなくてはいけない。昔を尊び、今を構築する。我々は今をどうするのかということを問われている」

「大樋の歴史が330年ある。それは守っていかなくてはならない。片や、今の、平成の陶芸というものを世界に発信しなくてはならない。私の場合は2つの柱を立てているんです。大樋の伝統を継承するものと、陶芸家としての芸術性の高いもの。今はそういう新しいモノをつくっていかなければやっていけない時代に突入したといえます」

「文化というのは人間のチェック機能なんです」
大樋さんの作品
今をどうするのか?という問いかけが作品となる


門戸は開放すべきだと思う

-茶道やワビサビといったことが時代に逆行する一面もあると思いますが現代に何を提案できるとお考えでしょうか?

「人それぞれに独自の価値観で判断すればいいと思う。ただ、門戸は開放すべきだと思う。どうぞお入りくださいと。一度やってみたらいかがですか?楽しいかもしれませんよと」

「大切なのは平和であること。平和というのはお互いに仲良くすることです。仲良くするということはお互いに理解し、知ってもらうということ。それを介在するのがパーティであったりする。例えば会社の帰りに一杯飲もうとか。気軽にお茶をやろうやというのも茶道への入り口かもしれない」

注1:高台とは茶碗の底がそのままべったりと下につかないように、丸く輪にした陶土のこと
大樋さん写真
「高台(注1)というのは人間で言うと顔にあたる。これが一番決め手なんや。下手か上手かはここですぐに分かる。全知全能をここに集中するわけや。茶碗に限り」

「だからそういった手軽なパーティと茶道というのはそういう意味ではかけ離れたものでは無い。もちろん茶道には歴史的な空間の形式はあるんです。それはそれで維持しないといけない。家元制度というのはそういう四角四面の形式の基本を教えていく制度や」

「お茶の世界でも開かれたお茶もあれば昔ながらの限られたお茶もある。又現代的に腰掛けて、簡単にお茶を飲むものもある」

「ですからバリエーションの1つとして勧めないといけないということと、限られた窮屈な日本的なものをやっていかなくては文化が崩れるということです」

「私は展覧会等の公募展などがあった際に会場に茶席を設けて、作品でお茶を飲んで頂けるようにしているんです。そこで花も活けて、会場にお茶の文化を持ち込んでいく。ですからこういう事を色んな所で展開していけると思うんです」
大樋さん写真
非常にエネルギッシュで、今も数々の講演やイベントを行うその姿は年齢を感じさせない


積極的にお抹茶を出すような運動も必要

-石川、金沢という土地について
「金沢という所はお茶どころでもありますからね。京都、名古屋、金沢というのは。昔は何処へ行ってもお茶が出たけれども、最近では随分少なくなった。積極的にお抹茶を出すような運動も必要です」

「私のうちにきて頂いた方には必ずお抹茶を出します。そうすると「大樋先生のところでお抹茶を出して頂いた」と他所でいって貰っているようですが、つまりはいかにそういうところが少なくなったかということです。やはり地域の特色を出していかないと。金沢も特色がなくなる」

大樋さんの作品
抹茶椀に対するその飽くなき探究心は尽きることない

作品を作る風景


『今を考えなさい』ということですね

-人生で一番大切にしていることは何ですか?
「温故知新、それは歴史を検証することや。そしてもう1つは古壺新酒という言葉。それは壺に酒を入れたままでは腐ってしまう、たえず新陳代謝をしなさいということ。水というのは流れているから水なのであって、溜まっているのは腐ってしまう。『今を考えなさい』ということですね」

-今最も興味を持っていることは?
「陶芸の良さとは何なのか?今の時代において昔のものを検証していきたいという気持ちがあります。例えば仁清、乾山のものは良いといわれているけれども、本当にそうなのかと。光悦でもそうです。今の時代にどんなものをつくる必要があるのか?21世紀の陶芸をすべきだと思う。そして創意創作において誰にも負けない、優れたセンス、高い完成度のものをつくりたい。この2つです」


時代を切り開いてきたと共に十代目として大樋焼きの伝統をつくった権威のある方ですが、「面白いやろ」と言って作品や窯などを見せてくれた、探求心溢れる、その柔軟な姿が最も印象に残る方でした。
オリジナルの窯
窯も大樋さんのオリジナルなものだ

大樋さん写真

大樋さんの石川つながり―石川県金沢市生まれ―十代大樋長左衛門


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