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坂本 秋央さん

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世界で唯一の「加賀紙衣」

ファッションのスタイル
人の魂を揺さぶることですよね
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坂本さん顔スナップ
【プロフィール】
紙衣作家 坂本秋央さん
18代続く紙漉きの家に生まれ、世界で唯一の「加賀紙衣」をつくる坂本秋央さんと父宗一郎さん。伝統の様式にとらわれることなく、世界をまたにかける工芸家でありアーティストでもある和紙のパイオニア


一番初めは申し訳ないけど自分ありきなんです

-坂本さんにとってライフワークとはなんですか?
「まずね、基本はほんとに単純な事で、自分が喜ぶものを、自分の興味があるものを作りたいっていうのが基本なんですよ。一番初めにね、人ありきじゃないんですよ。一番初めは申し訳ないけど自分ありきなんですよ」

「要するに自分が何を表現できるかっていうのが一番初めに来るわけですね。で、その結果として人にどういう風に与えてんのかなっていうのが来るわけですよ。それはね、自分の気持ちもほんとの所よく分かってないのに、方向性も含めて全ての事が100パーセント分かってるわけじゃないのに、人の気持ちは分からないと。だから最低限自分が楽しめるものとか、自分が感動するものを作る努力は出来るわけですよね」

「で、それによって人が喜んだり、ナニこれって怒ったりしてくれる事が全てなんですよ。つまり言い換えれば、究極はね、人の魂を揺さぶる事ですよね。で、それはアートであろうと工芸であろうと何でもそうだと思ってる。人の琴線に触れるというか。それが最終目標であり自分のライフワークですよね」

「だから、簡単にね、人に安らぎを与えるとか、っていうような事は言えないですよね。モノを作るっていうのは、そんな簡単なものではなくて、形を作るのは簡単ですけど、形の中のものを作るのっていうのは非常に難しい事であって、だからそれは自分を基準にしてますけどね。自分を基準にして、自分がそれによって感動できたり、いろんな事があって初めてどうですかっていう事を皆さんに問い掛けるわけです。その作業なんですよ」
坂本さん全身スナップ


ミーハーって大事なんですよ。モノを作る者にとっては

-和紙と紙衣は違うとお話されてましたけども、その違いを分かりやすく言うと、どういう事になるんでしょうか?
「紙衣は衣装用の和紙ですよ。仏間着からはじまってるように。衣装としての和紙なんです。で、いわゆる普通の一般的な和紙っていうのは、『衣』じゃなくって、『住』の方ですよね。ふすまとか。それともう一つは、あの、一番多いのは、字を書くって事ですよね。字とか絵を書く部分ですよね。ところが、紙衣の場合は、マテリアルであってマテリアルじゃないんですよ」

-マテリアルであってマテリアルでない?
「うん。つまり、紙衣自体が作品になり得るでしょ。紙衣の場合は、そういう意味でマテリアルなんだけど、マテリアルじゃなくって、そのもの自体が発するパワーがものすごく強いので、それを生かせばそのものだけで作品になるっていうところがありますよね。それが根本的に違う」

「例えば、僕屏風作った事あるんですよ。二つ折りのね。大きいんですよ。でね、あまりのパワーに、狭いところに置けないんですよ。息苦しくなって。そういう事が分かってからは、もちろんその触感としてね、感じてもらうっていう作業があるんですが、それとは別にね、訴えかけるものがあるんなら、触る触らないは別にしてね。そんな垣根を作る必要もないと、そういう風に思いましたよね。それもこれもやっぱり、興味本位でやってみた成果ですよね。興味本位とかね、ミーハーって大事なんですよ。モノを作る者にとっては」


紙衣の帯
紙衣の帯:17代坂本宗一郎さんが復活させた紙衣の魂を受け継ぐ。普通の帯と同じようにぎゅっと締めて使っても10年20年はもつ

僕ね、自分を着飾る事が好きなんですよ

-坂本さんはその何に対してミーハーに?
「何でもそうですね。人がやってて楽しそうな事はみんな、やりたいなーと思うし。僕ね、自分を着飾する事が好きなんですよ。だから例えば、服に凝るとめちゃめちゃ、人が来たらひっくり返るぐらい服買った時代もありますしね」

「でもね、自分を着飾る事が好きっちゅうのは、なぜかっていうとね、そういう事をする事によって、自分が変わっていく事が結構あるんですよ。気持ち的に。そうすると、行動も変わったり。いろんな事があるわけですね。それが楽しい。それが、服だけじゃなくって、髪の色を染めたり、めちゃめちゃスキンヘッドに近くしたり、いろんな事の。変化をものすごい求めるっていうのは、僕ん中に一番強いんですよ。でも、浮気はしませんけど(笑)」
「KAMIE」(カミィ)
「KAMIE」(カミィ):紙衣でできたクマ。坂本さんの現代に対する1つの問いかけ。それはまるで“皮膚”のようで、生きている感じ

和紙って?
(石川県指定6業種→和紙へ)


〜しなければなりませんってのは嫌いなんですよ、僕

-ちょっと興味深かったのは、坂本さんは、"血"と"地"にこだわってるって話されてまして、やっぱりこの二俣の土地にもすごいこだわりがあると感じたんです。で、すごくミーハーな部分、何でも興味持って、変化を求めると。である意味それは、相反した面だと思うんですが
「あのね、それはそれ、これはこれ。だからそれが僕を追い詰めない理由なのかなって思ってるんです、自分の中で。ただそんな難しい事じゃないんですよ、実は。興味あったら行くし。本質っていうのだけを押さえておけば、後はいいと思ってるんです」

「本質は何かっていうと、僕が二俣の地というところに育まれたDNAを持っていると。18代紙漉き、加賀藩の御紙屋肝入の末裔だ、というものさえ押さえとけば、後はもう、フラフラー、フラフラーですよ(笑)」

「それは、大事な事だと思うんで。だって、〜しなければなりませんってのは嫌いなんですよ、僕。だからそれが、仕事でもそうだし、モノ作りもそう。人付き合いもそうだし。何でもいいんだよ、思いついたまんまで。責任は自分で取りますから」

一番怖いのはね、捕らわれるって事ですよ

「別にね、まぁ、何で生きるかっていうのは別に必要ないわけですよ。別にアーティストで生きようと工芸家で生きようと何で生きようと。それは、まわりが勝手にあいつはなんだって言ってるだけの話であって、自分としては好きな事をやってるだけで。もちろんプロですからね、売れないと困るから、それなりの事は考えますけど」

「だけど、自分でこういう風にしていくんだとか、ああいう風にしていくんだって、そんなもん、もうね、時が経てば経つほどね、コロッコロッコロッコロッ変わっていきますからね。でも変わんなきゃいけないと思ってるし。で、今年はこんなもんやりたいな、あんなものはいいや、ってあるわけですよ」

「だから、自分でも極力、そういう事に縛られるような事はしないでおこうと思ってますけどね。それは僕、大事な事だと思う。一番怖いのはね、捕らわれるって事ですよ。捕らわれが一番怖い」
紙衣をつくる工程:小揉み
紙衣をつくる工程:小揉み

紙衣をつくる工程:棒絞り
紙衣をつくる工程:棒絞り


ライフスタイルも全部含めて僕はトータルだと思ってるんで

「伝統っつったって、今やってる事も100年、300年前にやってる事もみんな伝統なんです、これ。だけど、ほんとに惜しむらくは、今の若い人って、いわゆる日本日本したものってあんまり飛びつかないんですよ。正直な話」

「それはね、僕らの側にも責任はあると思うし、もう一つはね、ライフスタイルが違うから。だって、例えば伝統工芸品の座卓ありますよね、日本の和室に置く。その和室が少ないですもんね、まず」

「ところが作っている人も意外とそんなとこに住んでなかったりするわけですよ。普通の例えば一戸建ての家買ったりなんかしても、ないわけでしょ?まともなそういう和室が。で、モノっていうのはトータルだから。例えばね、言い方悪いけど安い日本間にね、何百万のテーブルは似合わないわけですよ。それ浮きますよ、やっぱり。ライフスタイルも全部含めて僕はトータルだと思ってるんで」

「つまり、今までは、まぁ300年とは言わなくても50年、100年持つ家とともに来てるわけですよね。そういうものはやっぱり格がありますから似合うんですよね。ところが耐用年数20年とかの家に、普通にちゃんとしていけば100年もつモノってのは格が違うのか、合わないんですよね」

「僕が言うのはそこなんですよ。だいたい作っている人でも耐用年数20年30年の家に住んでるわけです。で、そこに住んでいながらそういうものを作ったってね、難しいですよね。それならそういうとこに住んでるラッキーさを生かしてですね、こんなもん作ってこれ置いたら、なかなか似合うしかっこいいぞ、っていう作業を何でしないのかと僕は思うわけですよ。そこに住んでるんだから自分が夢中になってこれいいわ、かっこいいわっていうのを作ってね、世の中にどう?どう?ってしつこくしつこく、問うていけばいいじゃないですか」
紙衣の和紙
様々な工程を経てつくられる紙衣の和紙
坂本さんの魂が込められる


坂本さん_01


紙衣ってね、いろんな無限性があるんですよ

「若い時はね、紙衣を作るって事は、何にも考えてなくって、僕の仕事だっていう事しか考えてなかったんだ。父親が作ってるから。やっぱり、継ぐっちゅう事は作る事だろう、っていうぐらいしか思ってないわけですよ。そんなもんですよ」

「だけど、今はね、紙衣ってね、いろんな無限性があるんですよ。でパワーも半端じゃないし。それがだんだん分かってきた。今まではどちらかっていうと、紙衣に助けられてた部分の方が多いんですね。つまり、作品としてね。変な言い方だけど、拙い作品でも、紙衣のパワーとか、独特のもので、もっと良くしてくれてる部分があってね、助けられてるって部分が多くって」

「今は割と、自分では対等かなっていうところがあって。これからは、紙衣を操作するんじゃなくて、紙衣とともに自分のレベルも上げていく。ってちょっと抽象的ですけどね。自分の中ではちゃんとすっきりしてるんですけど、うまく言えなくって」
坂本さん_02

坂本さんの石川つながり―石川県二俣生まれ―二俣から世界へ


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